町に点在する人工の明かりが一つ、また一つと消えていき、深遠な闇が辺りを覆い始める。
 深夜1時、静寂が町を支配するなかで、一画のみ張り裂けんばかりの緊迫した空気を纏う空間があった。
「閉じよ、閉じよ、閉じよ、閉じよ、閉じよ
 繰り返すつどに五度
 ただ満たされる刻を破却する」
 衛宮邸内、中庭の中心に一人の青年が月の光に照らされ、立っている。
「同調開始」
 彼の言葉に反応するように、辺りの木々達がざわめきだす。
「告げる
 汝の身は我が下に、我が運命は汝の剣に
 聖杯の寄るべに従い
 この意、この理に従うならば答えよ」
 魔力の奔流が青年の躯を襲う。それでも彼は、伝説の騎士王との再会を確信し、さらなる詠唱を紡ぎだす。
「我は常世総ての善と成る者
 我は常世総ての悪を敷く者」
 一陣の風が舞う。刻は満ちた。
「汝三大の言霊を纏う七天
 抑止の輪より来たれ
 天秤の守り手よ」

 

「問おう。貴方が、私のマスターか」
 闇を弾く声で、彼女は言った。

 

 

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