「しかし、沢山買ったな」
「そうね。最近は食事も2人か3人の時が多かったから、あまり買い物をしなくても済んだのよね」
「そうだな。でもまぁ、俺は賑やかの方がいいかな……」
 聖杯戦争の話が一段落ついた後、俺たちはご近所の商店街で買い物をした。聖杯戦争が始まってしまえば、買い物なんて行ってる暇はあまりないだろうということで、食材やら生活用品を思いつく限り片っ端から買っていったのだが、気がつくと俺の両手は大変なことになっていた。まぁ、聖杯戦争の話が終わって、なぜか遠坂に俺の周りの女の子がかわいいことについて詰問され、困り果てた挙げ句に無理矢理買い物に連れ出したので、遠坂の荷物が軽いことについては何も言えないのだが……。
「そういえばさ、士郎。藤村先生なんだけど、この先1週間くらいは来てもらわない方がいいわね」
「ああ。それなら、メールを打っておいたよ。『藤ねぇも年度初めはいろいろ忙しいだろうからこれから1週間くらいはそのまま家に帰りなよ』って送ったら、『なんか、お姉ちゃん避けられてるみたいで淋しいけど、士郎の言葉に甘えることにする』って返ってきたから藤ねぇなら大丈夫だと思う」
「……アンタ、そういうことは本当に気が利くわね」
 なんか、褒められてる気がしないのは気のせいか?
「藤ねぇは前回の聖杯戦争に巻き込んじまったからな。今回まで危険な目に遭わせるわけにはいかないんだ」
 身内の存在というのは聖杯戦争では弱点となりうる。前回の聖杯戦争では、キャスターにそこを突かれて痛い目にあった。同じ失敗を繰り返すわけにはいかない。
「士郎も少しはマスターとしての自覚があるのね」
「当たり前だろ。俺たちは絶対にこの聖杯戦争で勝ち残らないといけないんだ。それに、家族を危険な目に遭わすわけにもいかないだろ」
 俺は遠坂の方に顔を向けた。
「もちろん、遠坂も俺の家族の内に入ってるからな」
 言った。言ってやった。たぶん俺の顔は真っ赤になっているに違いない。
「それなら、絶対に無茶はしないように」
「うっ……痛いとこ突くな、遠坂」
「どうせアンタのことだから、無茶するなって言ったって無駄なことは分かってるけど、わたしのことを本当に大切に想ってくれてるなら、絶対に死ぬんじゃないわよ」
「ああ。分かっているさ。俺は死なないし、遠坂も死なせない。そして、救える人は全員救ってみせる」
 それこそが俺の理想。偽善だって言われようと、俺はこの理想を生涯貫いてみせる。そしてこの聖杯戦争を、その第一歩としてみせる。
「まぁ、そのためにもまずはサーヴァントの召喚をしなきゃならないんだが、召喚ってどうやるんだ?」
「はぁ?」
 睨まれた。
「いやだからさ、俺は正規の召喚の仕方を知らないんだ。だからその、教えてくれるとありがたいんだが……」
「そうだった。アンタは儀式もせずにセイバーを召喚したんだったわね」
「うっ……すまん」
「謝ってどうするのよ。まぁ、ぶっちゃけると儀式に必要なものは魔法陣と聖遺物と呪文詠唱だけだから、士郎は聖遺物の投影と短い呪文を覚えてくれるだけでいいのよね。魔法陣はわたしが描くから」
「そうか、それなら安心だな。……ところで、召喚用の聖遺物って投影品でもいいのか?」
「いいのかって、そんなことわたしにも分からないわよ。それでも、今から聖遺物を集めるわけにもいかないんだから、投影品を使うしかないじゃない」
 確かにそうだ。
「わかった。それなら俺はできるだけオリジナルに近いものになるように努力するよ」
「ええ。その辺は士郎を信じるわ」
「ああ。まかせとけ」
 そうこう話している内に俺たちは衛宮邸に戻ってきた。さて、聖杯戦争の準備を本格的にはじめるとしますか。

 

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