「衛宮士郎君がセイバーのマスターで、遠坂凛さんがランサーのマスターでよろしいかな」
 二人ではいと答える。
「それでは、お二人を正式なマスターとして登録をいたそう」
 登録を手早く済ませ、デニーロ神父が話し始めた。
「いや、それにしても驚きましたな。こんなにも早く聖杯戦争が再開されるとは、思っても見なかったことですからな」
「ええ。わたしも驚きました。おそらく、わたしたちによって聖杯が破壊されたことにより、行き場を失ったマナが大聖杯に戻ったことでこんなにも周期が早まったのだと思いますが、確証は無いですね」
「なるほど。考えましたな。私らもその線で探ってみることにしましょう」
「ええ。よろしくお願いします」
 二人はだいぶ気さくに話している。遠坂も言峰相手とは偉い違いだ。
「ところで、お二人は別の要件があるのではないですかな」
 さすがに一教会の司祭だけあって、話が分かるな。
「鋭いですねデニーロ神父。実は冬木のホテル火災の件についてお伺いしたいのですが」
「やはりそうでしたか。あれは、サーヴァントの仕業でしょうな。私どももなるべく裏工作はしたのですが、あれほど派手にやられては隠しきれませんよ」
 どうやら、当たりのようだ。
「やはりそうですか。どのようなサーヴァントがやったかはわかりますか」
「それは分かりませんな。しかし、対軍宝具を使用したのは間違いないのではないですかな」
 まぁ、対軍宝具を使うということだけでは有力な情報にはならないな。
「他に変わったことはありましたか?」
「それがですね。どうやらあの炎には対魔効果があるようですな。それに、水への耐性も備わっている。魔術的にも、物理的にもあの炎を消火するのは困難ですぞ」
「そうですか。それならば、教会側はどのように消火活動を行ったのでしょう」
 デニーロ神父は、笑顔を浮かべて答えた。
「いやはや、その質問にはお答えしかねますな。ただ、貴女のことですから、分かって聞いているのでしょう?」
「いえ、わたしには何のことだか」
 とぼけたように振る舞う遠坂。なるほど、わざとリスクが高い質問をすることで、相手の注意を引きつけて、自分の事件に対する関心の深さをアピールしたわけか。
「どうやら貴女方にとってこの聖杯戦争は特別なようですな。分かりました。少しだけ、私らの持つ機密情報をお教えしましょう。私の感じたところ炎の対魔力はCランクといったところでしょうか。並の魔術では歯が立ちませんね。それが建物全体に広がっていましたから、局所集中をすればその対魔力はB以上になるかもしれませんな。侮れん相手ですよ。それに、彼らは火力や炎の形を自由に操れるようですな。と、ここまでですかな。これ以上の情報はさすがの私も教えることはできませんぞ」
「ええ。わたしも充分満足いたしましたからそのくらいで結構ですよ。それで、わたしのサーヴァントですが、前回の聖杯戦争も参加しています。どうやら前回の聖杯戦争の記憶が残っているようで、珍しいケースの召喚になってしまいました」
 魔術師同士の取引では等価交換が基本だ。さすがは遠坂、抜かりがない。
「参りましたな。そのような情報を出されてはおつりを払わなければなりませんかな」
「いえいえ。これ以上聞き出してしまえば、わたしのほうが提供できる情報がなくなってしまいますから」
「ははは。分かりました。では、それはまたの機会に取っておきましょう。それでは、お二人とも何かありましたら、またこの教会におとずれてくださいな」
「ありがとうございます、デニーロ神父。神父もお体にお気をつけて」
「ええ。お二人とも健闘を祈りますぞ」
「「はい、頑張ります」」
「ほほっ。息はぴったりのようですな。将来が楽しみですぞ」
 そんな神父の言葉に二人で頬を赤く染めていた。本物の神父様に言われると、妙に意識しちゃうよな。

 

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