「…………ん」
 窓から差し込んできた日差しで目を覚ました。
「……よっと。まだ5時半か」
 外を見ると日が昇ったばかりなのか、まだ仄かに薄暗かった。
「さてと、朝ご飯の準備をするかな」
 と、その前に日課である朝の筋トレを行うべくジャージをもって道場へ足を運ぶ。
「さてと、手早く済ませますか」
 軽く気合いを入れて、俺は道場に足を踏み入れた。
 すると、どうやら先客がいたようだ。セイバーが道場の奥で行儀正しく正座していた。
「おや、シロウですか」
 俺の気配に気づいたのか、セイバーはこちらの方に振り返って微笑みかけた。不覚にも、そんな彼女の可憐な仕草にドキリとしてしまった。
「どうしたんだ、セイバー。こんな朝早く」
 俺の内心をセイバーに悟られぬようにすぐに話題を切り替えた。
「どうやら今回のシロウの召喚は成功したようで、ラインが繋がっているようです。そのため体調がよすぎて、今日は早めに目を覚ましてしまいました」
「そうか。そう言えば、俺の魔力が少しセイバーの方に流れていっている気がするかも」
「ええ。前回はシロウが私を召喚した瞬間にラインを閉じてしまったみたいなので上手く繋がらなかったみたいですね。しかし今回はシロウから魔力が供給されている」
 前回の聖杯戦争では、ランサーに追われている最中にどういうわけかセイバーの召喚に成功した。しかし、その召喚が不完全だったために多くの障害を残してしまったのだった。
「ラインが繋がっていて本当によかった。えっとそれなら、霊体化はできるのか?」
「……いえ、私は一応生者という位置づけなので、霊体化はできないのです」
 やはり、遠坂が言ったことは間違っていなかったようだ。
「まぁ、それは仕方がないな。それに、俺はその方がセイバーを近くに感じられて嬉しいかな」
「私が霊体化できないのは変えられないことなので、シロウにそう言ってもらえるのは嬉しいですね」
「それなら何よりだ。ところで、俺は少しばかり筋トレをしに来たんだが、道場の端を使ってもいいか?」
「筋トレですか。それならば、せっかくですから私と剣を合わせますか?朝ご飯もあるので、そんなに激しくはできませんが」
 願ってもいないセイバーの申し出に俺は即答する。
「それは是非ともお願いしたい。セイバーがいなくなってから、あまり剣を振るう機会がなかったから腕は落ちているだろうけど、聖杯戦争に向けて少しでも相手と立ち合えるようにしたい」
 何しろ世界の命運が俺たちにかかっているのだ。少しでも強くなれるのであれば何だってするぐらいの気概をもっているつもりだ。
「わかりました。では、はじめましょうか。もちろん容赦はしませんよ」
「臨むところだ。思いっきり来い!!」
 
 1時間後、俺はボロボロになった体を携えて、ストレスの発散をしてご満悦の腹ぺこ王様を今度は舌で満足させるべく台所で次なる戦いを始めたのだった。

 

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