Fate/stay night

〔The arrow of faith〕

 全く同じ人間はいない。たとえ遺伝子レベルで全く同一のクローンであったとしても、生活環境や人間関係が異なれば異なる思考や判断もする。故に、容姿に違いがない人間であろうと、その器が違えば、それは全くもって別人である。それは人間だけではなく世界中に存在するあらゆる生物、況や物体や事象でさえも、一つとして同じモノは存在せず万物がそれぞれに異なるモノとして存在している。

 人間は思考する動物である。物事を頭で考え、言葉や行動として表現しコミュニケーションをとる。物事を思考し、表現して意思疎通をとる。そうした行動をする生物はいるが、人間ほど意思疎通が可能な生物は存在しない。そうした言動を通じて他者とのコミュニケーションをとる人間という生物は些か不思議な存在である。社会という集団で生まれ育ち人はそれぞれに人格を形成する。人格形成に寄与するのが社会であれば、社会が異なれば、その分異なった人間が育つ。そして、社会の中でも人は様々な他者と出会い、相互に影響し合いながら、個を確固なものとしていくのである。

 異なる他者とのコミュニケーションを通じて、人々は社会の中で生まれ育つ。だからこそ、一人として全く同じ思考や行動をとる人間がいることはありえない。人はそれぞれ異なる経験をしており、その経験を元に人格が形成されて、価値観が生まれる。故に個人が個人たるのは、そうした異なる他者が存在するからであり、個人と他者がコミュニケーションを通じて影響し合いながら相互依存しているためなのである。

 記憶や経験といったモノは、そうした個人の形成や他者との人間関係に大きく影響を及ぼしていると言っていいだろう。その人自身の過去や経験があるからこそ、人は千差万別であり、各人各様なのである。

 記憶はその人自身といっても過言ではないだろう。

 記憶が全て消え去ったとき……
 個は個でいられるのであろうか。
 個が消滅し、新しい個が形成されるのであろうか。
 それは記憶を失った本人でなければわからない。
 
多種多様な社会と人生が錯綜する世界で、人は記憶を蓄積して、この世を去っていく。
 人は記憶と共に生き、記憶は人と共にある。

 これは、衛宮士郎と美綴綾子という二人が紡ぐ聖杯戦争の記憶。

 冬木に放たれる二人の信念の矢が行き着く場所は果たして何処なのであろうか……。

 『Fate/stay night 〔The arrow of faith〕』

Prologue

2月6日

2月7日

2月8日

 

 

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※設定※
 Fate/stay night UBWルート、七日目から分岐。

  士郎と凛が屋上にいる際にライダーが結界を発動し、四階で士郎がセイバーを召喚する。その後、士郎と凛は一階へ、セイバーは四階に残る。
-分岐点-
 キャスターの使い魔が士郎と凛を襲う。士郎は、強化した机の脚でそれに応戦。しかし圧倒的な敵の数に、二人で一階に行くことを諦め、士郎は敵を食い止めながら凛に先に行くよう提案する。そして凛は一階に先に到着、瀕死のライダーと逃げる慎二を目撃する。慎二を追おうとするがキャスターの使い魔の襲撃に会い、凛はガンドで応戦した。

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