【5月29日早朝】
 
 はてさて、今は……五時前か。俺、確か昨日……。
「はぁ〜。さて、おきよう」
 微睡みから目覚めるとともに昨日の夕飯という拷問の記憶を思い出しながら、意識が鮮明になっていく。結局あの後俺は風呂に逃げて、俺が戻ってくるとみんなは泊まることにしたらしく、姦しい女性陣の会話を邪魔しないように自分の部屋に戻ってすぐ寝ちゃったし。
「はぁ〜、しかし今日はやけに静かだな。ってまだ早すぎか……」
 そう、まだ五時前だったと再確認した。
「はぁ〜。それにしても藤ねえなら兎も角、美綴まで泊まると言い出して……それに便乗して桜まで」
 そうなことを考えながらも、俺は久々に早く起きたことだし、道場に行き、剣の鍛錬をしようと思った。
 そして、鍛錬を始めようと精神を集中させ、俺の一部のようになったあの言葉を口にし始めた。
「同調開始(トレースオン)」
 
Side Rin
 
  今、わたしたちは修学旅行のように雑魚寝状態で寝ている。思えば昨日、藤村先生と綾子が泊まるといって結局桜も泊まって、それで大きい客間で一緒に寝たんだったわね。
 はぁ〜結局あの夕食後、士郎は逃げてお風呂に入っちゃったわけで、わたしは夕食の時の仕返しで惚気……じゃなくて、現状のわたしと士郎について皆に詰問されて話したのだけど……。それにしても藤村先生は確かに士郎の保護者だからいろいろ聞かれるのは分かるけど、なんで綾子まで質問してくるのかしらね。しっかしまぁ、士郎がいなくてある意味良かったかしら。だけどあの綾子の顔は……
「ぷっ」
 今でも思い出すと吹きそうね。それにしてもなんでわたしは起きたのかしら……時計は……
「まだ、六時前じゃない。寝ましょ」
 そして二度目のお眠りタイム……二度寝をはじめた。
 
Side out


 俺は最初の鍛錬でいつも剣の生成を行う。そして剣舞。それがひと段落すると今度は剣を散布させ、最後にこの道場にある木刀を同調(トレース)させて複製しそれを振る。
 そしてこの鍛錬をしていたとき、不意に誰かの目線を感じた。聖杯戦争の名残のせいか
「誰だ!!」
 と、大きな声を上げてしまった。
「い、いや、その黙って見ていたのは謝るがそこまで睨まなくても」
 道場の入り口を見ると、制服姿の美綴がいた。
「あ、すまん。いや、集中していてさ」
 俺がそう言うと、美綴はこちらのほうにやって来た。
「なるほどな。遠坂が言っていたことがよ〜く分かった」
 むっ、凛がなんか言ったのか……。
「ふむふむ、最近あんたの顔が大人びてきた理由がさ」
 大人びたってそれじゃあ
「老けたみたいに言うなよ」
「あ、いやいや、そうじゃなくて。背が伸びたりとか……ま、いいか」
 そう言って美綴は直ぐに振り返り出て行こうとした。
「あ、そうだ。ちなみに朝はお前と桜の合作だって藤村先生に聞いたから楽しみにしてるよ」
「ああ。それなら任せろと、言いたいが美綴、朝起きるの早くないか………」
「なに、言ってんだい。もう六時ギリギリって、あ、今、六時丁度だな」
「な、なんだって」
 しまった。久々に鍛錬したせいでいつもより多く鍛錬に時間を費やしたみたいだ。
「そうか。ならそろそろ戻るとするか」
「ああ、そうなの。それじゃ、朝食を期待しているぞ」
「了解だ。居間のテレビでも見ていてくれ」
「ああ、わかった」
 そして、美綴が出ていったことを確認して投影した木刀を消した。はぁ、さて朝飯を作らないとな。桜が待っているしそれに今回は美綴もいるしな。まぁいつもうるさい虎もいるし……。とその前に……シャワーは浴びとくか。
 
 そして、シャワー浴び終えたあとに居間に行くと、桜と美綴、そして藤ねえがいた。
「おはよう。桜、それに藤ねえは今日は早いんだな」
「あ、先輩おはようございます」
「あ、士郎おはよう。そして私はお腹が空いた〜。早く桜ちゃんと一緒においしいご飯を作って〜」
「ああ、腹が減ったから起きたのか」
 現在はまだ六時半前といったところだろう。いつも朝飯は七時ぐらいだからな。
「それじゃ、桜すまないがよろしく頼むよ。」
「あ、はい先輩♪」
 そして俺たちは料理を作り始めた。
 
 そして二十分後……
 
「そろそろ、いいんじゃないですか先輩」
「そうだな」
 そして朝飯作りも終わりそうになり、美綴が聞いてきた。
「そういえば遠坂は遅いな。まだ寝ているのか」
「あ、姉さんならそろそろ起きてくる頃ですよ」
 そう桜が言うと居間の扉が開き、まだ、パジャマ姿の凛が現れた。
「おい、桜。あれが遠坂なのか?(コソコソ)」
「はい。最近は先輩が起こしに行っていたのではああいうことは無かったのですが、通常はいつもあんな感じですよ(コソコソ)」
 そして、桜がちょうどキッチンを離れて美綴と話している時に、半分寝ぼけている凛は、今を素通りしてそのままキッチンにやって来た。
 そして、凛は久々に爆弾を投下しはじめた。

「しゅろう、おはよう。チュ」
 
 そして、いつもことながら(いつもは二人だけの空間でしかしないが)モーニングキッスをして……
「しゅろう〜ミ〜ル〜ク〜」
 そして、いつもどおり牛乳を請求。俺は慣れた手つきで、冷蔵庫のドアを開けて、凛専用の猫さんマグカップに注いで渡した。
「ほら、凛。零すなよ」
 そして凛はいつもどおり豪快に飲み干した。
「ふ〜。おはよう。士郎♪」
 そうして、いつもの凛になってくれたのは良かったのだが、時既に遅し……。凛が爆弾を投下している姿は、吹き抜けのダイニングから丸見えである。
 
「あははははははははははははははははははははははははははははっは」
 美綴は大爆笑して指を差しながら「あんた等は新婚さんか」と、言ってげたげた笑っている。
「士郎ちゃん。私はもう何も言わない。だってなんだかやっていけそうだと昨日思ったから」
 昨日、なにがあったんだ藤ねえ。
「はぁ〜姉さん。そこまで見せ付けなくても」
 と、桜は笑っていたが……。ときおりちょっと後ろを向き
「絶対奪う。絶対奪う。絶対奪う。・・・(ブツブツ)」
 なんだか、ブツブツ言っていたが小声で聞こえなかった。
 
「え、えっ……?」
 凛はやっと状況が掴めたみたいで
「き、着替えてくる」
 と、言ってイソイソと戻っていった。この状況をどうしろと……
「はぁ〜やっぱりあんたらすごすぎ……あっはっはっは」
 美綴はさらに笑っていた。
「いや、これはだな………」
「なるほど、テスト前の先輩が起こしに行っていた理由はこれですか。フフフフ」
 いや、桜さんその笑みはむちゃくちゃ怖いです。
「さぁ、士郎ちゃん、桜ちゃん。ご飯ご飯♪」
 藤ねえはある意味大物だよ。
「ああ、そうだな。桜」
「はいはい、」
 そう、言ってやれやれっと言う感じで桜はこっちに来た。
 そして、こちらも準備が終わり、凛も仕度が終わったらしく、もうすでに制服姿だった。
「お、おはようございます」
 さすがにあれの後は凛も黙って定位置に……あれ、なんで俺の席がないんだ
「ああ、すまないが衛宮の席は貰った」
「いや、それは見てわかるんだが……」
 なぜだ。なぜ、凛の隣が不自然に空いている。
「あの、えーと」
「早く、座ったらどうなの士郎」
 いや、藤ねえ。これは完全に美綴がはめただけだろ
「ああ、わかった」
 しかし、さすがに凛の隣に座れない理由などなく立っているのも不自然なので座った。そのときの美綴の顔は悪魔に似ていた。
 
「さて、みんなが揃った所で、いただきます」

「「「いただきます」」」
 
そうして、今日も衛宮家の朝は始まった。



《四日目(前編)終了》


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