【5月29日】
 
 はぁ〜。
「ね、士郎ちゃん。食欲無いの?それならお姉ちゃんが」
「あ、いや、そういうわけじゃないから藤ねえ」
「あら、そう。でも箸が進んでいないようだけど」
 そりゃ、そうだ。なんたって今日の朝食は俺の隣に凛が居るんだぞ。最近やっと正面が慣れたばかりだったのに、いきなり隣はさすがに……。『美綴あとで覚えておけ』と内心で思いながら、なんとか食事を再開させたのだが……。
「その、姉さん。一つ質問なんですけど」
「あら、なにかしら桜?」
 こちらがなんとか食事に専念している時の桜が質問をしていた。
「朝の姉さんの言動はあてつけですか?」
 笑って質問している桜だが、なんだろうなぜかライダーの他者封印・鮮血神殿ぐらい怖いものが見える。しかし凛は俺の恐怖を知ってか、知らずか。
「あら、桜。朝のあれとはなにかしら。わたしはただ“いつもの通り”の朝を迎えたはずなのだけれど」
 いや、“いつもの通り”をそんな強調しなくてもいいじゃないですか遠坂さん。
「しかし、遠坂のあんな姿が見れるとはな。しかし衛宮は毎日あんな遠坂を見ているのか?」
 なんでそこで俺に振るかな。って凛、なんだその『余計なこと言ったらあとでガントだから』みたいな笑顔は……。なんか最近凛の笑顔が一番怖いかな……はぁ〜。
「そうですね。先輩はどうも慣れた手つきでやっているように見えましたが、どうなんですか。ちなみにテスト期間中が特に怪しいですね」
 いや、桜、反対側に座っているのに、そんな風に机越しで俺の方に身を乗り出すと、むっ…胸が………
「エ・ミ・ヤ・君?」
 あ、し、しまった。
「ハ、ハイ。ナンデショウ、リ、リンサン?」
「今、桜の何処を見ていたの?」
「イエ、ドコモミテイマセンガ」
 俺の弁明も虚しく。
「あら、そう。桜、綾子、それに藤村先生。申し訳ありませんが、少し士郎と一緒に席を外しますので」
「「どうぞ、どうぞ。」」
 すでに、朝飯が終わりお茶を飲みながら答える美綴と藤ねえ。そうかい…触らぬ神に祟り無しってか。そして桜は……。
「もう先輩ったら、見たいなら見たいって言ってくれればわたしはいつでも……。そうですよね、あんなツルペッタンよりもわたしの方がいいですよね……」
 ……って、な、な、なんてこと言うんだ桜。でも凛のも小さく見えて俺がピー(規制させていただきます)しているから、たぶんだがそこまで小さくは……。
「それでは」
 赤い悪魔の極上の笑みがこちらに向き、そして俺は俺の部屋に連れて行かれた。
 
〜ピンポーンパンポーン〜
 
 少々赤い悪魔の調教が終わるまで、喉かなことは考えず士郎の冥福を祈りましょう。
 
〜ピンポーンパンポーン〜
 
 
 ここは、通学路なんだろうか?あれ、なんで俺は通学路に……(ガクガクブルブル)。
 
 
〜少々お待ちを〜

 
「だからですね。姉さんは」
「あははは、そうなのか。遠坂?」
 と、ガールズトークをしている二人組。さらに
「う、うるさいわね。べ、別にいいでしょ」
 赤い悪魔は、今回は通学路で、腕を組んできています、はい。
「しかし、遠坂、なんでずっと衛宮と腕なんか組んでんだ?」
 美綴、それは確信犯でいいんだな。こういうときは触れないのが一番だろうが……。
「そうですね。先輩がなぜか意気消沈しているので姉さんが誘導しているのは分かるのですが、なんでそんな風にくっ付いて、しかも腕を組んでいるんですか!!」
 いや、桜。まずそうなったのはあなたのせいですよ。
「あら、いいじゃない。それにその御本人さんはなんも文句なく、ここまで来ているからこのままでいいのよ」
「だけど、凛さすがに学校ではやめてくれよ」
「お、やっと、衛宮が復活か、しかしお前それはもう意味がないと思うが」
 美綴の言葉もたしかにそうなのだがと、言うよりも今すぐにでもやめてほしい。理由はそ、その……当たっているためだ。
「しかし、さすがにこれで登校したら俺は学校の生徒の三分の二を敵にしそうなのだが……」
「そうですね。姉さんの人気は二年生の間でも良く耳にしますから」
「なに、言っているんだい、なんたらに味方なんてあの藤村先生ぐらいだぞ」
「あ、なんでさ?」
「まず、この一人身のわたしにいきなりあんな朝を見せ付けたからだ!」
 美綴…そこまで、指を立ててビシィ!としなくても………。
「そうですね、たしかにわたしは“先輩の味方”ではありますが…お二人の味方にはなれませんね」
 いや、凛、桜、こんなところでにらみ合うなよ………。
「ふん、上等じゃない。それぐらいが調度いいぐらいよ」
 いや、だからなんでそこまで自信があるんだこの悪魔さんは…。
「おいおい、凛。凛がもっても俺がもたないよ」
「そこは気合でどうにかしなさいよ。それでも男なの士郎」
「んなこといったって「ゴホン!!」っつ?」
「先輩、そろそろ校門なんですけどホントにこのまま、手を繋いだままで行くんですか?」
 いや、だ、だから桜、なんでそんな笑顔なんだ。やはり姉に似てしまったのか。
「と、いうよりもただ単にお前らのバカップルぶりにこっちがつらいだけなんだがな。そうだろ桜?」
「美綴先輩、それじゃ身も蓋も無いじゃないですか!」
 あの、桜。その事を言うほうが身も蓋も無いような……
「だから、これは「お、等々見せつけ始めたな」だ〜か〜ら〜って!!」
 凛が美綴に文句を言おうとしたら、後ろから声がした。
「おはよう、衛宮に遠坂嬢、それに美綴嬢に、これは間桐の妹の桜嬢もか。衛宮よ、何時から間桐のようになったんだ?」
「は、なんでさ?」
 俺は氷室の言葉がよく判らなかった。
「だからな、そんなに女を連れて」
 と、氷上が言ったとき、赤い悪魔が降臨しました。
「あら嫌ですわ、わたしの士郎をあんなワカメと一緒にしないでくださる」
「あ、そ、その、すまないな。と、遠坂嬢」
 おいおい、さすがのあの氷室でも苦笑いしているぞ。さすが凛と、俺が感心していると……。
「な、な、な」
 なんか、蒔寺が驚愕しているようだが………。
「それでは、失礼しますので」
 凛はそう言うと俺の腕を引っ張った。
 そしてそのまま、校門の前……校門の前ってそれはヤバイ!
「お、衛宮おはよ……う……」
 あーあ、よりにもよって、一成ですか。
「おはよう。一成」
「あら、おはよう柳洞君」
 俺らが挨拶をしたが未だ固まったままの一成。さらに後ろから、一緒に来ていた美綴が遅れながらも到着。
「おいおい、お前らあたしらを置いて、ってどうしたんだ柳洞は」
 未だ口が開いて固まっている一成を見て、美綴が言った。
「さあ♪」
 なぜか上機嫌の凛。
「はぁ〜、はぁ〜、はぁー。まったく姉さん、いきなり先輩を連れて行かないで、じゃなかった。いきなり置いて行かないでくださいよ」
 さらに美綴の後を続くようにして到着する桜。しかし桜最初に言った言葉の意味はなんなんだ。
「は!!俺はなにを」
 固まっていた一成が復活をしたが……。
「なんで、貴様は衛宮の腕に抱きついて登校している!!」
 と、大声で言ってしまった。その声に今登校してきている生徒はもちろん、さらには廊下から外を見ている者までこちらを向いてしまい、注目度がさらに増えた。
「お、おい、さすがに一成、大声は不味いだろ」
「あ、しまった。衛宮、許せ。しかし、しかし」
「あら、柳洞君、“わたしの士郎”になにかようかしら?」
「な、な、な」
 なんか、蒔寺と同じ感じだな。なんでだろう?
「はぁ。おい遠坂。そろそろ行くぞ。衛宮も行こうぜ。このままだと埒があかない」
 美綴が呆れながら言ってきた。
「それもそうね。それじゃあね柳洞君。」
「…………………………」
 その、なんていうかすまん一成。
 
 そして、俺らは自分達のクラスに向かった。しかしその途中の廊下でこんな会話を聞いた。
「お、おいあれ」
「お、出たな。この色男」
 とか…
「ね、あれって。オシドリ?」
「そうそう。しかも“両者”ともすごいの」
 とか、しかも桜の学年の生徒からもすれ違う際…
「すごいね」
「うん、うん、片方はいつもだけどね」
 などと、よく判らない反応である。しかしその反応するものはどれも俺の教室の前にある掲示板を見てからの反応のようだ。そして、そこには人だかりが出来ていた。
「あら、なにかしらね?」
 凛も分からず。
「さあ?」
 俺もわからず、だったが……
「なんだ、お前ら知らないのか。あそこの掲示板はいつも、成績優秀者の名前と、得点が、テストを返される前に発表されるんだぞ。ちなみにいつも遠坂は一番だった」
「興味ないわね」
「そうだな。俺はいつも平均より上ぐらいだったから」
「いや、衛宮。お前も偶にだったが英語は載っていたぞ」
「そりゃ、藤ねえがうるさいからだ」
「なるほどね。しかし今日は何時にも増して多いな」
 と、そこへさっき下駄箱で別れた桜がこっちに走ってきた。
「お、桜か。これは一体なんなんだ?」
 俺の質問に桜は
「自分で見てください!!」
 と、なぜか怒っていた。なぜ?
「ちょっと主将」
「お、なんだ」
「実は………」
「そ、そうか」
 なんか、美綴達が話しているがなんだろう?部活かな
「すまない、お二人さん。先に行っててくれ」
 と、なぜか半笑いで消えていった。
「綾子、どうしたのかしら」
「さあな?」
「まあ、いいわ。それじゃ見て見ましょうか士郎?」
「あ、まあ、いいか」
 そして俺らがその掲示板に、もとい自分の教室に向かう途中なぜか会う人会う人に道を譲られしかもよく見られた。そして書いてあったその文字は
 
―第一学期中間テスト、第三学年成績優秀者―
1位、遠坂凛  平均100
 
そうここまでは皆普通にスルーなのだがそこにさらに下に
 
同立、衛宮士郎 平均100
 
と、書いてあった。おいおいそんなバカな
 
「う、嘘だろ」
 俺の呟きに凛は
「うふふ、さすがわたしね」
 と、自分を褒めていた。まあ確かにこの俺がここまでこれたのは凛のおかげだろう。なんて考えていたのだが
「だけど、今回は士郎も頑張ったみたいだからご褒美ね」
 そして、凛は皆がいるこの廊下で俺に…………
 
 
 
 もう今日の授業も終わり、放課後。周りはオレンジ色に染まり、部活連中の声が聞こえてくる。ここはいつもの屋上。
「はぁー疲れた。ったく凛は」
「な、なによ。べ、別に良かったでしょ。さすがにあれはまずかったと思うわよ。わたしでも」
「い、いや、その嫌ではないけどさ。さすがに場をだな」
「しょ、しょうがないじゃない。まさか士郎がそのあんな成績を取るとは思わなかったんだから、それに」
「それに?」
「嬉しかったのよ。士郎と一緒って」
「な………」
「ね、士郎。わたしも同じ結果なんだから、同じご褒美くれる?」
「ああ」
「って士郎!」
「り、凛が言ったんだぞ」
「うん。きて」
 そして、二人は夕方の空のように赤い顔でキスをした。

《END》 

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