さて、すでに体育祭は始まっている。
 現在トップは隣の組、そして俺らの組と続いているのだが、問題は次に来ている組であり……
「先輩の後ろにきましたよぉ〜」
 ……そう、桜の組だ。
 なにをしたのか分からないが、どうも桜も今回の賞品がほしいらしい。これは一体どうしたことか、見ると桜の組はまるで何処かの軍隊のようだった。ちなみに指揮官は……
「皆さん、次も一位じゃないと……ワカッテイマスネ?」
『イエス・マム!!』
 桜だ。これは俺がよく知るる桜というよりも、完全にキレた凛に似ていた。
 そして、俺の隣で震えている奴がいる。
「ガクガクガクガクガクガクガクガク…」
「だ、大丈夫か?慎二」
「ひっ!って衛宮か、なんだい僕は今精神統一をしていたんだよ邪魔しないでくれ」
 どう見ても何かに怯えている。まあ、本人が気にしないでほしいということなのだから気にしないこととする。
 そして、アナウンスが入った
 
『続きまして、借り物競争』
 
 借り物競争。
 これは凛が出る競技なので俺は必死で見ていた。
 やはり目立つのが遠坂スキルだろう。しかし、凛と並んでもう一人目立つ人物がいる。
 それは、桜だ。今回は桜が出るらしい。ちなみに桜のクラスの状態は
「いいかお前ら、上官が行くのだ!必死に応援するぞ!!」
『おぉぉぉぉぉぉ!!』
 ありえないほどの統治っぷりだった。これは令呪もビックリだろう。
 さて、借り物競争がスタートする。
 ちなみにこの競技の簡単な説明をすると、スタートで一斉に走り出し、その先に置いてあるお題の紙を取って、そこに書いてあったもの、または人を連れてくるというもので、ここまではなんら変哲も無いただの借り物競争だが、問題はその審判が藤ねえということだ。
 そして凛がお題の紙を取って、俺の方に走ってきた。
「お、おいどうしたんだ?凛、おい凛」
「いいから来なさい!」
 俺はその言葉にすぐに従い、凛に手を引かれるままに走った。そして、お題の紙を審判の藤ねえに渡す。どうやら、俺たちが藤ねえへの最初の挑戦者のようだ。
「はいはい、今は先生だから公平に審議するよ。けどこの二人って本当に仲いいのね。お姉さん的にはバンバンザイで、先生的にはバンバンザイだ」
 結局一緒だ、いうことらしい。
 藤ねえは凛の持つその紙を見て……
「……ご、ごう……かく……」
 なにか苦しそうに言った。
 というよりも……。
「あはははははあはっははははは、凛ちゃん、もうホント面白いな。うん合格、それじゃあ一位だからこっちね、ちなみに士郎、お題はね「わぁぁぁ!」いいじゃないの凛ちゃん」
 久しぶりの凛の赤い顔を見たような気がするが…しかしそんなに恥ずかしいものだったのか?
「うぅ、義姉さんがそう言うのなら……だけど士郎笑わないでね」
「ふふ、これよこれ」
 そして藤ねえが渡してくれた紙には“これが無いと生きていけないもの”と書いてあった、えっと
「あ、あのその凛。お、俺はうれしいぞ……」
「………バカ」
「はいはい、それじゃあ次に来たのは、あ、桜ちゃんね。はい、いらっしゃい」
 そして続いて桜がゴール、そして連れてきていたのは
「慎二?」
 そう慎二だ、ちなみになぜかボロボロだ。まあそれはいいとしてお題はやはりアニとかかな、と思っていたが
「どれどれ、お、わ、ワカメって桜ちゃんこれは」
「なにを言っていますか藤村先生、ほら兄さん」
「ボクハワカメデス、ダメナワカメデス」
「よくできました♪、それで藤村先生どうでしょう」
「はい、合格。それじゃあ二位だからこっちね」
 そんなこんなで、ドンドンゴールする生徒達。これで午前の部は終了だった。
 俺らはそのまま外で飯となるのだが、ちなみにこの時間だけは自由なクラスの行き来が許されている。ということで、大体の連中は違うところに行っていた。例えば陸上部とかは固まって食べていた
りするみたいだ。
「まあ、それよりもうちのクラスの場合は目に毒なものが始まるから全員逃げたのかもね」
 そういうのは美綴だった、しかし目に毒とはなんのことだ?
「そうかもしれませんね、あ、お邪魔します先輩」
 そして後ろから登場するのは桜だった、そして遅れてきたのが
「うん?なぜうちのクラスはこんなにも少ないのだ、まあいい。衛宮午前の部は早速お前の直したものが活躍したぞ、感謝感謝だ」
 生徒会の仕事で体育祭以外での運動で汗を流している一成もこっちに合流した、あと現在うちの担任の藤ねえもいるのだがすでに弁当に食いついてなにも見ていないのが現状。
 
「それで夫婦さんのお弁当はどうなっているんですか?」
「綾子あんたねぇ「今日は先輩達は各自で作ってきたみたいです」ちょ、桜!?」
「ふむ、いつもは衛宮にまかせっきりの遠坂ですら今日のこの日は作ったか……乙女だねぇ遠坂?」
「う、うるさいわよ綾子、それとそこで笑いそうになっている慎二!」
「な、な、なんだ遠坂…くっ」
 いつもの凛からは想像できないほどの焦りように慎二が笑いを耐えていた。ちなみに一成はキョトンとまるでなにを見たのか分からない感じであった。
「桜」
「どうぞ、姉さん」
「あははは、だめだ抑えきれっ、と、遠坂…い、いやさ、桜までな、ないやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 ちなみにこれはたったの三十秒の間だった、そしてすぐにこの姉妹は笑顔で帰ってきた
「それじゃあ、お弁当にしましょうか?」
 そしてそれをいうのは
「藤村先生今食べたでしょう?」

「ええ、衛宮君の料理はおしまい、それでは続きまして未来の義妹の料理を」
「う……ど、どうぞ」
 凛はどうもこの手の押しに弱いらしいので……
「藤ねえ、もし食べたら今日の打ち上げは雷河爺さんに言って不参加になるよ」
「う、分かったわよ。そりゃあ彼氏としては彼女の料理を他の人に渡したくないのは分かるけど、その顔は反則よ。お姉ちゃん引いちゃった……」
 俺はそんな怖い顔をしているのだろうか?
「それじゃあ、気を取り直して昼にしようぜ」
 美綴の言葉で昼となった。
 これからあんなことになるとは、たぶんここで穏やかに昼を過ごしている者達には分からないだろう。

「それにしても相変わらず衛宮の飯はうまそうだな、それに遠坂のも」
「……あげないわよ」
「へっどうせ、愛情たっぷりでしょうからそんなもの食べたら胃がもたれるっての!」
「ホントですよね、先輩も今日はなんか妙に力が入っていますし」
「しかし遠坂も衛宮のために昼飯を作ってきただけでも進歩だと思うぞ」
「柳桐君?わたしを今までどう思っていたのよ」
「ふむ、そういわれると文句しか出てこないな。しかし衛宮が嫌うのでな、簡単に言うと亭主関白の逆という感じだな」
「うぅぅぅ」
「あはは柳桐、それは言いすぎだぞ」
「そうですよ、姉さんだって先輩に甘えようと努力「桜!」ふふ、ここまでにしといてあげますよ姉さん」
「う、じゃ、じゃあいいわよ……ね、士郎食べさせて♪」
「は!?」
 ……穏やかな昼、なはず……だった。
 こんな衆目を集めるには格好の場で、赤い悪魔が黙っている訳がなかったのである。
 
 
 

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