さて、今日は晴天。待ちに待った日曜日。そう、今日は俺らの体育祭の日。俺は現在今日のお昼用に弁当を作っている。
“ピンポーン”
 そこにチャイムがなる、そしてドアが開き入ってきたのは……
「おはようございます先輩。今日は早いんですね」
「おっはよ〜今日は頑張っていくよう!!」
 いつもの二人であるが、あれ一人足り無いような?
「桜、慎二はどうしたんだ?」
 そう、最近ではいつも桜と一緒に来ていた慎二が居ない。
「ああ、あのワカ…兄さんなら今日は先に行くと」
 一瞬桜が何を言おうとしていたのかは分からなかったが、まあいいか。俺はすぐに弁当の準備に取り掛かる。そして桜がいつものエプロンをかけて手伝い始める。
「あれ、先輩?今回は量が少なくないですか?まあ藤村先生の量は変わりがないようですが。それにしても……」
 すでに弁当は完成し、いつもどおりの袋に入れる。そういえば、居間で今日のニュースを見始めている藤ねえに昨日言われたのだ。
「なんでも朝飯も今日のお弁当も手を抜いたら、強制赤点だそうだ。どういうことだか」
「ふふふ。そうですか、それにしてもそれは少ないような……。それに今日は姉さん遅くありませんか?いつもなら今の時間位に牛乳を飲みに先輩の「ふ、甘いわよ桜」え、姉さん!?」
 今朝方玄関を開ける音がしたから俺は間違いなく来ているだろうと思い、朝食の準備をしていて正解だった。
「ね、姉さん。今日は一体どうしたんですか?」
「あのね、今日は体育祭でしょ。だから士郎とわたしは弁当を各自で作ってくるって事にしたのよ」
「あら、それなら姉さん。なぜここに、それならそのままお家で朝食をすませてくればよかったじゃないですか?」
 最近天使が悪魔になってきている桜がそう言う。
「あら、わたしもそうしようとしたんだけど、士郎がお前はこっちで食べるんだって言うから仕方なく居るのよ、さ・く・ら」
 最近、赤い悪魔から赤いゼウスに昇進した凛はそんな事を言う。
「せ、先輩それは本当ですか!」
「あ、ああ。そりゃ凛だって家族なんだから一緒に朝食をするのは当たり前だろう?」
「…あ…ああ…そ、そうですか…」
 そして朝食となった。
「うまうま」
 藤ねえを見ると、今日は一段と食べている。やはりこれが虎の本気のようだ。
「ブツブツブツブツブツブツ」
 桜の方はというと、さっきから何か言っているが聞き取れない。そして凛は……
「やっぱし、和食じゃ士郎に勝てないか。う〜ん」
 今日も今日で独り言のように唱えていた。

 それから二時間後。
 俺らは既に体育着に着替えて、校庭に出ていた。そして俺はスパナを持っている。
「一成、これでたぶん大丈夫だと思うぞ」
「すまんな。こんなときまで。ほれこの前と同じ茶だ」
 生徒会のインカムの調子が悪いらしく、ちょっとした修理をしていた。後ろから一成がお茶をくれた。
「何言っているんだ。生徒会はこれからが大変なんだろう。それじゃあ「ああ、居た居た。衛宮探したよ」あれ美綴どうかしたか?」
 一成からもらったお茶を飲んでいると、美綴が生徒会のテントに入ってきた。
「どうかしたかじゃないよ。あんたのところの嫁が、あんたがいないせいで非常に機嫌が悪くなっているんだよ。とっと戻ってくれ。そうしないとうちのクラスの士気が下がる、お分かり?」
「あ、そうですか…了解した。それじゃあ一成」
「ああ、すまないな。それでは指定の時間の放送を聴いて並んでくれ」
 そして俺は命を削るために自分のクラスの所に戻った。そんな俺に対する凛の第一声。
「あら、美綴さん、ありがとう。わたしの夫を探してくれて。それでは後二十分ありますのでちょっとお話してきます。大丈夫ですわ、ちゃんと五分前には戻りますから」
 久しぶりのこの笑顔に俺、いやクラス全員が凍りついた。そして…
「それじゃあいきましょうか、A☆NA☆TA?」
「りょ、了解だ、凛」
 全員が俺に敬礼をして、体育館裏に連れられ俺は儚くガントの的となったのは言うまでも無い。気が遠くなるような時間、俺は必死でガンドを避け続けた。

 それから二十分。

「以上で、校長先生のお話を終わりにします。続いて、生徒会長のお話です、柳洞くんお願いします」
 俺はあれから、凛の愚痴+ガントを散々聞き、抱きつかれながらなんとか諫めて、事なきを得た。ホント俺って聖杯戦争でよくもったなと思う。
「そして今回、生徒会からは優勝クラスだけの特賞を用意しています。それでは皆さん、事故の無いよう切磋琢磨して体育祭を大いに盛り上げるように。以上、生徒会長柳洞一成」
 一成の言葉を確認するように隣のクラスの生徒たちは目が光っていた。それにしても今回の特賞ってなんだろう?
「それでは各自、準備運動をちゃんとして競技に望むように。それでは開会式はこれで終わります」
 俺たちは個々のクラスの所に行った。最初は一年からであるから、三年はそこまで急がなくていい。しかしそこに二年の桜が通った。そしてこちらを向いて
「姉さん、わたし負けませんから」
 笑顔でそう言う…うん怖いな。凛の妹だと最近になって知ってからというもの、さらに実感してきた自分がいた。
「あら、遠坂の家訓に負けの二文字は無いわ。それを承知で挑む気、桜?」
 こちらはすでにレベルアップしたゼウス。ちょっとした余裕があるようだ。しかし安心できない。なんていったって遠坂の家の人は、代々うっかりスキルを持っている。これもホント最近になって実感することが多くなった。
「ふん、姉さんなんかには負けませんから」
 そして選手の入り口の方に向かって行った。
「ふふ、楽しみにしているわよ、桜」
「楽しそうだな、凛」
「ええ、本当に」
 そういう凛の笑顔はやはり綺麗だった。しかしそこに
「あの、あんたらさ。そういう甘い世界は家でしてくれ、頼むから。それと二人ぐらいだからな、そんなに密着しているの」
 こちらも笑顔だが、完全に邪が入った笑顔。そしてそれに続くように頷く女子連中。

 体育祭は始まったばかりだ。
 
 
  

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