『ああ、またここに来たんだな』
 私はひとり深淵な海の底に沈んでいる
 私はひとり広大な夜の海に浮いている
 私はひとり空虚な闇に溶解している
 ここが何処なのかは知らない
 分かりたくもない
 ただ私は彷徨うだけ
 何もしない。しようとも思わない
 だって
 何かをしようとしても、ここでは無意味
 何でもできるし、何もできない
 全てがあって、空虚な場所
 根源の渦
 人はそう呼ぶけれど
 私にとってはただの海
 こんなところにいたって、何も得ることはできない
 ただ、怖いだけ
 なぜ怖いのだろう
 何も無いから?
 いや、違う
 私は一人でいるのが嫌なんだ
 一人でいるのが怖い
 闇に光はいらない
 でも、私は光を見つめている
 私を包み込む光
 夜の海はやがて、昼の空へと変わっていく
 太陽の光を浴びて
 いつしか伽藍洞だった私の器は
 新しい光を宿していた

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