嵐は過ぎ去った。
「はぁ……どうなることかと思った」
「さすがですぜ、ボス」
  静音がわたしの肩を叩く。
「ただ、ポルターガイストは本当だったわね」
「……そうだね」
  地面は揺れず、壁の装飾や食器だけが不自然に揺れる。科学的には説明ができない現象だった。
「ねぇ、静音……」
  わたしが静音に話し掛けようとした時、店のドアが開いた。
「「いらっしゃいませ」」
  静音と声がハモる。中に入って来たのは、今会いたくない人物だった。
「ん?二人ともどうしたのそんな格好で」
  そして続いて入って来たのは、今絶対に会いたくない人物だった。
「傑作だな、これは。トウコために写真撮っとくか?」
  真っ黒な服に身を包む黒眼鏡の青年黒桐幹也と、着物の上に赤のブルゾンという奇妙奇天烈な格好でうろつく殺人姫両義式だった。
「どうして兄さんたちがここにいるんですか?」
  ああ、穴があったら入りたい。幹也に、こんな恥ずかしい格好を見られてしまった。
「いや、所長が二人の様子を見に行けって言うからさ」
  橙子師も大きなお節介だ。つまり偵察に来たと、そういう事か。
「残念でした、兄さん。ポルターガイスト現象の原因はもうわかりました」
「えっ、そうなの?」
「はい。とっくに」
「あら、それって本当?」
 わたしたちの会話を聞いていたのだろう。沙織さんが会話に加わってきた。
「はい。これから梨本さんにもお話しようと思っていたのですが、ただ……」
「鮮花ちゃん、どうしたの?」
  沙織さんが心配そうに尋ねる。
「ただ、話していいものかと思いまして……」
  わたしの言葉に沙織さんが優しく答えてくれた。
「私達は真実が知りたいの。だから、鮮花ちゃんが私達を気遣ってくれているなら、その必要はないわ。むしろ、誰が犯人なのかを教えて下さいな」
  ああ、だからこそ言いたくないのだ。真実は時に残酷なものだから。

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