「ごめんなさいね。せっかくここまで来てくださったのに、主人が心ないことを言って」
「いえ、学生であるわたしたちが事件を解決しに来たなんて言えば、怒るのも当然です。正直に言えば、わたしでもご主人と同じ立場なら同じ態度を取ったと思います」
「あら、それなら私が貴女たちを雇うと言ったのは、おかしな行動だったのかしら?」
 奥様はわたしたちに笑顔を向けてくれた。
「大丈夫です。ちょっとヘンなヒトぐらいで、わたしより全然フツウです」
 フォローしているつもりなのだろうが、静音はものすごく失礼なことを言っている気がする。
「ありがとう。それでお嬢さまがた、ウチに来てみて何かわかったかしら?」
 試しに静音の方を向き、確認を取ってみるが、静音は首を横に振った。
「いえ、今のところはまだ何も……。その、詳しい話を伺ってもよろしいですか?えっと、梨本……」
「沙織よ」
 沙織さんが席に着くように手で促してくれた。わたしたちは席に着き、とりあえずメモ帳を取り出した。なんだか刑事のようで心が弾む。
「沙織さん、お願いします」
「ええ、実は……」

 沙織さんの話では、数ヶ月前からポルターガイストらしき現象が度々起こっているようだ。それも、客がいる昼間に集中して発生するようで、その所為もあり客足は減少の一途をたどっているのだそうだ。ポルターガイストの詳しい内容だが、およそ1分程の間、部屋中のモノが揺れ出すという。始めは地震かと思っていたが、地面は全く揺れておらず、その時間に地震は発生していなかったそうである。
「最近もその現象は続いているのですか?」
「いえ、お客さまが来なくなってから怪現象は起こらなくなりましたね」
 部屋全体の物体を全て揺らすような魔術を最近誰かが行使したのであれば、魔力の残滓が残っていてもおかしくはないが、魔術を行使した形跡は一切無い。
「やはり、実際にポルターガイストが起こっているところを見てみないことには何とも言えませんね」
「そうですか。その、私たちは何か悪い霊にでも取り憑かれているのでしょうか?」
 その質問は、非常に困る質問だった。わたしには一切の霊感がなく、その所為である事件を式と一緒に解決しなければならない羽目になったことがあった。まあ、最近は魔力についてはだいぶ感知できるようになってきていた。
「幽霊に関しては大丈夫だと思いますよ。わたしが視た限りでは悪いヒトは一人もいません」
 わたしが困っていると静音が助け船を出してくれた。しかし、静音が霊感の強い人だったとは驚きである。やっぱり、未来が視える人は霊感も備わっているのだろうか。
「とりあえず、明日は土曜日で明日から二日間学校の方もないのでここにいさせてもらっても構いませんか?」
「それは構わないけれど、お客さまがいないとポルターガイストは起こらないわよ?」
「それは………」
「それは大丈夫です。わたしにイイ考えがありますから任せてください」
 静音のこういった発言はすごく不安だ……。

  

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