もうほぼ100%、幹也は式のコトが好きだ。そして式も120%、幹也のコトが好きだ。認めたくは決してないが、二人は絶対に好き合っている。幹也が左目を失ってから、二人は顕著に甘い雰囲気を醸し出すようになった。
  もはやわたし、黒桐鮮花は、背水の陣を敷かなければならない状況下にある。
  手段など選んではいられない。元々、わたしがまどろっこしい計画を立てていたからこうなったのだ。こうなりゃ自棄だ。なんとしてでも式から幹也を奪回してやる。そのためにも、こんなお嬢様学校なんかで燻っているわけにはいかないと思う。何か行動を起こさなければ……
「鮮花ちゃん、どうしたの?深刻な顔して」
  ルームメイトのヲタク系不思議女子、瀬尾静音が話しかけてきた。何故だかはしらないが、こいつも幹也に恋をしている。静音の書いている同人誌がそれを如実に物語っていた。どう考えてもあの主人公は幹也で、ヒロインは静音だ。主人公の名前は、コクトー・ミキヤ。ヒロインの名前はセオン・シズネだ。悪の化身としてリョーギ・シーキが出てきて、ミキヤとシーキの戦闘シーンはなんとも痛快で結構面白かったりする。ちなみにわたしはミキヤの妹、コクトー・アザーカとして作品に登場している。私のことを気遣ってか、コクトー・アザーカは天才魔術師として大活躍しているのだが、それよりも名前をなんとかしてもらいたい。この同人誌の所為で、最近、黒桐鮮花の兄は神格化されつつある。かといって、わたしも愛読者の一人なので廃止させるわけにもいかないのだが……。わたしの他にも、熱烈な愛読者に藤乃がいる。藤乃はあまりの熱烈ぶりに、自身を作品に登場させたほどだ。シーキとフジーノの戦いは壮絶だった。というか、あれは実話だと思う。
  閑話休題。目下、最大の問題は、幹也を式に占領されないために何をすればよいかである。静音と兄さんを会わせるのは非常に癪に障るが、そうも言っていられない緊急事態だ。
「静音、来週の木曜は確か学院の創立記念日だった気がするから、外出届出しといて」
  そう静音に話すと、待ってましたと言わんばかりの表情をしている。
「もう出してあるよ。幹也さんに会えるのに、鮮花ちゃんの気が変わったら困るもんね」
  例の如く、わたしの悪友には近い未来が視えている。まあでも、静音が行くのを止めないんだから悪いことにはならないだろう。
「それじゃ、行っても大丈夫なのね」
  わたしがそう言うと笑顔で静音が答えを返した。
「ううん。行かないほうがいいと思う」
  はぁ。未来が視える人ってどこかネジが取れているのかもしれない。
「もういいわよ。どうにでもなれって感じよ」
「うんうん。その調子だよ、鮮花ちゃん。未来は変えていくモノだからね」
  静音はいつも黙っていればいいことまでいうから、わたしが悩むことになるのだ。きっとわたしはおよそ一週間、変えなければならない未来を連想しながら、シュミレーションを繰り返す羽目になるのだろう。

 

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