Fate/for the permanent peace

 我々が生きるこの世界は、絶対にして不変である。しかし、我々が生き得た世界は、この世界とは別に存在している。それが「並行世界」である。
 並行世界とは、無限に連なる可能性の世界である。要するに、同じ時系列には属するが、全く異なる世界のことである。自分が男である、女である、金持ちである、貧乏である、幸福である、不幸である、もしくは存在すらしていない可能性、そのあらゆる可能性を内包する世界こそが、並行世界なのである。ゆえに、この並行世界は、過去・現在・未来に渡り、全ての人間が選び得た全ての運命の数だけ存在するのだ。それも、その運命というのがどこで分岐しているかは、本人でさえ分からない。我々が気づかぬ内に、世界は多様に分岐しているのである。しかしその分岐点において、我々が取れる選択肢は常に一つだけである。そして、その道を選んでしまえば、決して戻ることはできず、ただ進むことしか許されない。世界は無数に存在しているのも関わらず、我々は一つの世界に生きることしか許されないのである。

 ここでとある男の話をしよう。その男という人間の運命は無数に存在する。しかし、その男の運命は一つしかない。彼が進むべき道は一つしかなく、辿り着くべき答えは一つだけである。その男は、7歳の頃、多くの犠牲者を出した大火災に直面した。目の前で多くの人々が彼に助けを求め、そして死んでいった。しかし、彼は生き残った。彼はその後、自らを魔術師だと名乗る男の家に養子として引き取られた。そして、その新しい父親の死を見届けると、彼は父の遺志を引き継ぎ、正義の味方を志す決心をする。そして年月が経ち、彼は穂群原学園の高校二年生となり、三学期が始まって間もない頃、彼は人生をも左右する事件に巻き込まれることとなる。それこそが、7人のマスターと、そのサーヴァントが、冬木市に伝わる第726聖杯をめぐって殺し合いを行う「聖杯戦争」と呼ばれる儀式である。彼は、とあるきっかけで冬木市では5回目となる聖杯戦争にセイバーのマスターとして参加することとなり、紆余曲折を経て第五次聖杯戦争の勝者の一人となる。そして彼は、この戦争の過程で、一人の女性と出会い、恋に落ちることとなる。さらに彼は、生涯正義を貫き通し、死後も守護者となって世界に奉仕し続ける己の理想が行き着いた自分の姿とも出会うが、彼は己の理想が「多数を救うために少数を切り捨てる」ような無慈悲なものに変わり果ててしまうことを許容できず、両者は衝突して、最終的に彼は、守護者となった自分に打ち勝つ。彼はこの第五次聖杯戦争を通じて、最愛の人を手に入れ、正義の味方としての己の信念と理想を再確認することができた。しかし、一方で、自身の理想が歪で、不透明なものであることを思い知らされこととなった。こうして激動の第五次聖杯戦争は幕を閉じた。そして、彼の新たなる生活が始まったのである。

 これまでの彼の人生を鑑みても、奇跡と呼ばれることは何度もあった。確かにその場面において、一つでも違う選択肢を彼が取っていたのならば、今の彼は存在しないことであろう。否、そういう選択肢を取った世界も彼の世界とは別に存在するのである。しかし、彼は数々の困難に直面しながらも、その都度答えを選択し、今の彼に辿り着いたのである。彼という人間の運命は、無数に存在している。しかし彼の辿る運命は一つだけだ。ゆえに彼は、この先の人生も、自らが選ぶ一本の道だけを信じて歩き続ける。
 

その男の名は衛宮士郎。

これは、衛宮士郎という男の、一つの可能性の物語である。

 『Fate/for the parmanent peace』

Prologue

6th Heaven's Feel

Family

London Fantasia

Justice

Peaceful World

 

戻る

web拍手

inserted by FC2 system