一階はロビーであった。俺たちの身体には軽く結界を張ってあり、普段通りの動きができるが、部屋には煙が充満しており、素肌を晒せば忽ち焼け爛れるほどの熱風が吹き付けてくる。
「ほう。我の炎が暴れていると思ったら、来客があったようだの」
 奥のソファーに座っていた男が立ち上がり、こちらを向いてそう言った。
「ずいぶん余裕ね」
 遠坂の挑発に男は笑みを浮かべて答えた。
「我に逆らうヤツは殺せばいいのだ。片端から殺せばいいのだよ」
  尚も男は笑みを崩さない。
「ひゃはっ。殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ。我は皇帝。逆らう者は死で以て、己の儚さを知るべし」
  男は楽しそうに猛り狂っている。
「コイツ、頭狂ってるわ」
「確かにイカれてるな」
  とはいえ、聖杯戦争においては、狂気に満ちることは強ち悪いことではない。寧ろ、バーサーカーのサーヴァントの存在が示すように狂気は時として脅威となる。
「ふはははははははは。愉快だ。実に愉快だ。マスターとサーヴァントの諸君。少しは我を愉しませてくれよ」
「こちらを甘く見てもらっちゃ困るわね。Anfang」
  疾風のごとく迫り来る火炎を、遠坂は水系の魔術で鮮やかに対処する。
「このような攻撃であれば私の抗魔力で突破できます。シロウは後方支援を」
「わかった」
「はっ。コイツはオレだけで十分だ。オメェらは休んでな」
  セイバーとランサーが二手に分かれ火柱へと突っ込んで行った。俺は自分に出来る最大限の援護を展開する。

「――――投影開始」
  投影は自分との戦いでもある
「――――創造理念、鑑定」
 自分の剣が相手を倒すイメージ
「――――基本骨子、想定」
 自分の理念が、現実に侵蝕されることは許されない 
「―――仮定完了。是、即無也」

 
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