「…ライダー、美綴先輩の血を吸って」
 遠坂に支えられていた桜が、苦しそうに息を荒げながらも閉じていた瞳を開きライダーに語り始めた。
「サクラ、無理はせずに休んでいてください!」
「ううん、いいの……わたしは大丈夫だから。それよりライダーは美綴先輩の言うことを聞いて。お願い」
 桜の表情に余裕はなかった。
「しかし、それではサクラが……」
「ライダー、こっちに来て」
 ライダーが桜のそばに駆け寄り、遠坂と交代するように桜の体を抱きしめた。
「最後まで私はサクラの味方です。私の魔力を感じて、自我を保ってください。サクラ」
「わたしは大丈夫。姉さんと先輩が、わたしを救ってくれるって約束してくれたからわたしは大丈夫だよ」
 消え入りそうな桜の声。
 それでも、桜の声は落ち着いていた。
 辛そうに息をする桜の顔には笑顔が咲いていた。
「わたしはライダーのことが好きだから。ライダーにはずっと側にいて欲しいから。ちょっとだけお別れしよう?」
 桜はライダーの顔を引き寄せると、桜はライダーの頬に軽く口付けをした。
「わたしが目を覚ましたら絶対側にいてね。ライダーがいなかったら、わたし怒るからね」
 そう言い残して桜は目を閉じた。
「サクラ!!」
 大声で呼びかけるライダーに桜が応えることはなかった。
「ライダーさん。あたしの血を吸ってください」
「……アヤコ」
 美綴は大きく息を吸い、ライダーに背を向ける形でその場に座り込んだ。
 そしてライダーは美綴に近づくと、両腕で美綴を抱きしめて肩口にゆっくりと噛み付いた。
 美綴の肩から血が滴り落ちる。
 ライダーは流れ出る血を下から舐めあげると、肩口に唇を当て美綴の血を吸い始めたのだった。
 
 
 
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