「へぇ。ここがシロウの家なんだ」
  新都から衛宮邸へと戻って来れた頃には、丁度日付が変わる時間となっていた。
「取り敢えず、居間で今後のことを話し合いましょ」
「そうだな。整理したいことが沢山ある」
  イリヤのこと、美綴のこと、次の戦いのことなど話題を挙げればキリがない。
「じゃあ、中に入るね」
  玄関の鍵を開けると、嬉々としてイリヤが先陣を切っていった。
「ニホンの家って楽しいね」
  手を後ろで組み、室内の所々を物色しながらイリヤは楽しそうに進んでいた。
「イリヤ、居間はこっちだぞ」
  そのまま、居間を素通りしそうになっているイリヤを引き止めて、居間の中へと入る。
「お茶でも煎れてくるから、皆は寛いでいてくれ」
「士郎、わたしは紅茶がいいわ」
  ちゃっかり遠坂が自分の意見を主張していた。
「イリヤはリクエストあるか?」
「シロウと同じがいい」
  自分用には緑茶を煎れようとしていたが、緑茶はイリヤの口には合わない気がする。
「苦いぞ」
  一応の忠告はしてみる。
「シロウと同じのがいい」
  結局同じ答えが返ってきた。
「セイバーはどうする?」
「わたしもシロウと同じものがいいです」
  むむっ。2人とも緑茶の存在を知ってて言ってるのだろうか。
「苦いぞ」
「大丈夫ですよ。何度も飲んでいますから」
  そう言われれば、意識せずによく緑茶を出していたかもしれないな。
「ランサーはどうだ?」
「オレは別にいらねえんだが……そうだな、紅茶を貰うぜ」
「了解。そうだ、遠坂悪いけど俺の部屋から布団を持ってきて美綴を寝かせてあげてくれないか?」
「わかったわ」
  遠坂が部屋を出るのを見送り、台所に入ってお茶とお茶請けを手早く用意する。
  いい具合に準備が整った頃、丁度遠坂が布団を抱えて戻ってきた。
「よし。色々整理するとしますか」
  夜も遅いが、日が明ける前に確認しておきたいことは山程ある。
  情報を制する者は戦いを制す。
  予測不能の聖杯戦争において、作戦会議は仲間同士の共通意識を高めるために非常に大切なのである。

  ……と、人知れず気合いを入れている俺の横で、予想通り緑茶に咽せているイリヤの姿があった。

 

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