「何してるんですか、姉さん!!」
「何って、アンタたちこそ何してるのよ!」
  いや、二人とも……それ、俺の台詞……。
「ユウゴさんに暴力を振るうなんて最低です」
「アンタこそ、初見の男性にいきなりキスするとか、何考えてるの?」
  何故か当事者の一人である俺は蚊帳の外にいたりする。
「わたしは仕方がないじゃないですか。ユウゴさんとパスを繋ぐにはキスが一番手っ取り早いんですから」
「ばっ……アンタまさか、ユウゴとパスを繋いだの?」
「当たり前です!魔術師相手では魔術抵抗が働いて簡単にはパスを繋げないのは姉さんも知ってますよね。その点、普通人であれば少し精神に干渉できれば、容易にパスを繋ぐことができるんです。それにユウゴさんは男性でわたしは女性。
ユウゴさんを動揺させるにはキスが一番手っ取り早いんです」
「だからって、なんでユウゴとパスを繋ぐのよ」
  アレカがそう質問すると、妹さんは頬を紅く染めて答えた。
「きっとユウゴさんがわたしの運命の人だと思って」
  ヤバイ……俺、いつの間にかモテ期がやってきてるのか?
「アンタの能力は制限されているのよ。上級クラスに上がったのに、アンタに許されたパスを繋いで良い人数はたったの二人だけなの。その二人目をユウゴにするなんて、何を考えているの」
「そんなのわたしの勝手じゃないですか。姉さんなんて、地上に下って誓約執行者になっているのに、わたしがユウゴさんとパスを繋ぐことはいけないんですか?」
  最早俺では手がつけられないほど、二人の論争は白熱していた。
「悪いわよ。アンタ、ユウゴの許可は取ったの?もし、無許可だとばれたら誓約執行者になるわよ」
「許可なら取りました。ねぇ、ユウゴさん」
  いや、許可なんてしてないと思うんだが……。
“ユウゴさん、お願いします。わたしの話に乗ってくださいませんか”
  妹さんの声が脳に直接響いた。なるほど、これがパスを繋ぐということなのだろう。
「あ…ああ、確かに許可したけど」
  俺も心が弱いな。
「嘘よ。そんなはずないわよ!」
  ごめんな、アレカ。俺さ、美女の頼みは断れないんだ……。
「そういう事なので、姉さんに文句を言われる筋合いはありませんので」
「……わかったわよ」
  アレカはすっかり落ち込んでしまい、黙り込んでしまった。
「ユウゴさん、ご挨拶が遅れました。わたしは、水のアレカの妹の幻視のセレナと申します。よろしくお願いしますね」
「ああ……よろしく」
「ふふふ。ユウゴくんは、もう私の妹たちと三角関係を作ったのね。私も混ぜてもらおうかしら」
  いつの間にか、アレカやセレナより小柄な美少女が俺たちの背後で座っていた。
「私はアレカたちの兄の、変幻のクリスティアンよ♪クリスって呼んでね。ほらユウゴ、呼んでみて」
「えっ……く、クリス……さん」
「ん、もう、照れちゃって♪でも、可愛いから許す」
 クリスさんは本当に、何も知らなければ笑顔が素敵で明るく活発な美少女なのに……。
「……兄さん。いい加減元の姿に戻ってください」
 アレカが睨みを利かせるとさずかにクリスさんも懲りたようだった。
「えー。いいとこなのに。じゃあいっくよー
くるりんマジック
かーわれっ、えいっ!」
  アレカのお兄さんは凄く恥ずかしいセリフとともに、お兄さんの服はリボンがするすると解けるように脱がされていくと未成年にはよろしくない際どい格好となり光りだして、スーツ姿になった。ただ、髪型は変わったものの身長や体格や顔は変わっていない気がする。
「改めて、僕はアルテミス治安管理局員機密部隊所属、変幻のクリスティアン。よろしく頼むよ、ユウゴくん」
「えっ……あっ、はい!よろしくお願いします」
  クリスさんに差し出された手を握り握手をした。あまりのギャップに戸惑ってしまったのだが……
「あはっ、ユウゴと握手しちゃった♪」
  やはりこっちが本性らしいことに、ショックを隠せない俺であった。
  はぁ〜。本当に波乱に満ちた生活になりそうだ。
 
 
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