その後、アレカの両親も帰ってきたので夕食を取りながら自己紹介をした。いやぁ、ここ数年既製品しか食っていなかった俺にとって、アレカの母さんが作った料理は格別だったね。ホントに美味しかったからガツガツ食ってたら、アレカの母さんに気に入られてしまった。

『娘三人だとご飯をあんまり食べなくて、張り合いがなかったのよ。やっぱり男の子よね』

 そうアレカの母さんは呟いていたが、娘三人って母親が言うのはおかしくねぇか?と、思うのは正常なはずだ。なにも突っ込まないクリスさんもクリスさんだが……。
 さて、自己紹介で分かったことを軽く整理しようと思う。まず、アレカには兄と妹が一人ずついるのはご存知の通りである。

 兄は、変幻のクリスティアンさん。変化と変幻の魔術を得意とし、アルテミス警察庁特殊捜査科に所属しているのだそうだ。
 妹は、幻視のセレカさん。 幻視と思考干渉を得意とし、アルテミス高等魔術学校1年生なのだという。因みにアレカは同じ学校の3年生だということだ。
 アルテミス高等魔術学校は、日本でいう高校に当たるのだが、授業は単位制で行われている。天空都市アルテミスでは、学校が一つしかないため、年齢に関係なくあらゆる授業を取れるようになっている。ただ、初めから上級魔術を学べるわけではなく、初級魔術から順に単位を取得する必要がある。初等部・中等部・高等部で必修授業が定められており、必修授業の単位を取得できない場合は進級、卒業ができなくなる。必修授業は、初等部・中等部の場合、全生徒同一であるが、高等部からは学科毎に異なってくる。
 アレカの所属する魔術司法学科の必修単位は、魔術知識は上級まで必要とするが、実技魔術は中級まででも良いらしい。一方、セレカさんの所属する操作魔術学科では、上級実技魔術の単位は必要で、魔術知識は操作魔術系以外は中級、もしくは不必要なのだそうだ。まぁ、そんな感じでアルテミス高等魔術学校は、ある意味日本の大学に似ている。
「アレカも実技魔術だけは苦手なのよね」
「お母さん!」
 天才魔術師として少女時代から名声を博していたアレカも、実技魔術だけは苦戦しているらしい。
「姉さんも意地はらないで中級実技魔術の授業に出るべきなんですよ」
「いいのよ。やばくなったら、条件付き特例卒業の手続きをするから」
「特例卒業は博士号がもらえないのは知っているだろう。上級魔術職試験が受けられなくなる。お前はそれでいいのか」
「いいわけないじゃない!」
「お前の言っていることは矛盾しているぞ。アレカ」
「もううるさい!お父さんのバカ!」
「父親に向かってバカとはなんだバカとは」
「まぁまぁ、アレカもお父さんもおやめなさい。ユウゴくんがいるのにみっともないでしょ」
 そう言ってアレカのお母さんが俺にウインクしてくれた。
「そうだな。この場は俺がひこう。ユウゴくん、今度アレカがちゃんと授業に出るよう説得してくれないか?」
「えっ、あっ……はい、分かりました」
 俺はアレカのお父さんとがっちり握手を交わした。
「……何返事してるのよ、ユウゴのバカ」
 そうアレカが呟いているのが聞こえた。
 

 

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