「第七誓約ですか?!あの誓約は問題が多くておよそ700年間執行されていないはずです!アルテミス法第四十五条であれば第二十四〜二十六誓約が適切なはずです。第七誓約だなんて……」
  アレカは先ほどまでの悲痛な面持ちとは正反対に、声を荒げてダモン長老と対峙している。
「ワシの弟子とは思えん発言じゃな。がっかりじゃ……。本当にお主は、第二十四〜二十六誓約が適切じゃと思っておるのか?」
「はい。だって地上人の侵入及び侵入加担があった場合は、天空人と地上人の隔離を考えるのが第一じゃないですか!だったら、第二十四誓約の『記憶消去』、第二十五誓約の『天空からの永久的追放』、第二十六誓約の『永久的な地上への降下禁止』が適切なはずです。間違ってないですよね」
  アレカは真剣な表情だ。ただ、俺としてはアレカの表情よりも二人の会話が気になる。記憶消去やら永久追放やら、凄い単語が飛びかっている。
「そうじゃの。確かに、地上人の侵入及び侵入加担の場合はアレカの言う通りじゃ。じゃがの、今回は事情が違うじゃろ。そこの青年が天空に来たのは故意ではなく、偶発的なものじゃ。それにのう、もっと重大な違いがあるのじゃよ。気付かぬか、アレカよ」
「……わかりません」
  ダモン長老は深く溜め息をつき、話を続けた。
「よいか、これまでアルテミス法第四十五条違反を犯した者は地上人でも魔術師なのじゃ。それが今回は、普通人の地上人が天空に迷い込んできたという特殊なケースじゃ。723年ぶりの大事件なのじゃよ。そんなことにも気付かぬとは、アレカもまだまだ勉強が足りぬの」
  そうダモン長老が言い終えると、アレカは黙ってしまった。そんな中で今度は俺が口を開いた。
「あの、先ほどから聞いていますけど、第七誓約って一体どんな誓約なんですか」
「ほれアレカ、青年が第七誓約についての説明を求めておる。答えてあげなさい」
「……第七誓約だなんて、そんなの…わたし……やっぱり考えられないですよ……普通なら絶対第二十四誓約で……」
「つべこべ言っとらんで、説明せぬか、アレカ!」
  ダモン長老の叱責に、アレカは「…はい」と答え、俺の方に向き直った。
「第七誓約はね、二人の人間に適用されるの。魔術によって、二人を見えない鎖で繋いで誓約が有効な限り二人が離れられないようにするのよ。二人が半径5メートル以上離れてしまっても、一定の時間が経つと一人がもう一人の下へ強制的に瞬間移動させられるようになるの。もう何があっても二人は離れることができない。そんな誓約よ」
  アレカの説明を聞き、情報を整理する。つまりだ、今回第七誓約が適用されるのは俺とアレカなわけで……。
「俺はアレカと四六時中一緒にいることになるってことか?」
  無意識の内に、頭の中で出た結論を口に出していた。
「そうよ。わたしとユウゴは一生離れることができなくなるのよ」
  俺とアレカが離れられない。離れても強制的にアレカのもとに連れもどされる。俺とアレカがずっと一緒。一生一緒。これからずっと……アレカと共同生活……ん?共同生活……。アレカと俺が共同生活……。
「ええええぇぇぇぇぇぇーーーーーーーー!!!!!!!」
  思わず俺は叫んでいた。
       

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