夜、アレカが風呂に入っている間、俺は風呂場に繋がるドアの前に椅子を置き、ただぼぅっとしていた。すると、ネグリジェ姿のセレカさんが椅子を持って現れた。
「ユウゴさん、少しお話しませんか?」
「いいですよ。俺もアレカが出てくるまで暇ですし」
 俺の返事にニコリと笑って椅子にちょこんと座るセレカさんは、本気で可愛かった。
「あのっ、ユウゴさんにお願いがあるんです」
「なんですか?俺にできることだったらなんでもしますよ」
 頬を染めて下を向くセレカさんは、本当に美しい。
「ユウゴさんのこと、兄さんって呼んでもいいですか?」
「えっ……」
 心臓が引っくり返るのではないかと思うほどドキリとした。セレカさんの『兄さん』は、とてつもない破壊力を持っている。
「その……ダメですか?」
 泣きそうな顔で言われてしまっては、断ることのできる男はそういるものではない。
「いや、ダメではないんですけど、お兄さんならいるじゃないですか」
「あれは兄というより姉なんです。だから、本当の兄が欲しいんです」
 本当の兄って……というか最初の方から突っ込みどころ満載なんだが……
「そういうことであれば、まぁ俺のことは好きに呼んでくれてもいいですよ」
「本当ですか?」
 セレカさんの顔がぱぁーっと明るくなる。
「ありがとう、兄さん!」
 うわっ……ぞわりとする。もはや、嬉しさを通り過ぎて背徳感に苛まれる。
「じゃあ、もう一つお願いしてもいいですか?」
「はぁ、なんでしょう?」
「わたしのことは、セレカって呼んでください。それと敬語は禁止です」
 セレカさんは非常に真剣な顔になってそう言った。
「分かりました」
 そう俺は返答したのだが、一瞬の沈黙があり、
「全然分かってないです、兄さん!!」
 ぷくっと頬を膨らませ怒っているセレカも可愛らしかった。
「分かったよ。セレカ」
「兄さん、大好きっ」
 そう言って、セレカが俺に抱きついてきた。勢い余って俺が椅子から真横に落ちようというところで風呂のドアが開いた。
 俺たちは抱きついたまま、ドアの外に出ようとしていたアレカの前にバタンと倒れ落ちた。
「なっ……なななにやってるのよ、あんたたち!!」
 このあと俺だけが鉄拳制裁を喰らったことは言うまでもない。 

 

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