「あなた、奏さん達の到着がいささか遅くないですか?」
 今年姓を鏑木に改めたばかりの貴子が、瑞穂に問いかけた。
「そうだね。何か問題がおこったら連絡が来るはずなんだけど、それもないしどうしたんだろう?」
「瑞穂さん、心配なのでしたら、奏ちゃんに電話をかけてみたらどうでしょうか?」
「紫苑さん。そうですね、そうしてみます。…あれ?」
「あなた、どうしました?」
 瑞穂はズボンのポケットから携帯電話を取り出し、着信を確認した。
「楓さんから電話だ。……はい、かぶっ……宮小路瑞穂です。楓さん?」
《はい。申しわけありません。連絡が遅れてしまいました》
「それはかまいませんよ。しかし、何かあったのですか?」
《そうですね。瑞穂さん、薫子さんへのお仕置きは何がいいと思います?》
「はい?」
 楓のあまりに唐突な質問に、瑞穂は思わず疑問符を浮かべた。
《実はですね。薫子さんが奏さんに合わせて荷造りを始めたそうで、私が着いたときには荷物は纏めてあったのですが、部屋が大変なことになっていたのです。さすがに、このままにしておくのはまずいということで全員で薫子さんの部屋を片付けてから寮をでましたので予定よりもだいぶ出発が遅れてしまったというわけです》
「それは薫子ちゃんらしくて微笑ましいね。だけど、確かにお仕置きは必要かな」
《そうでしょう?というわけですので、後一時間程かかると思います。その間に薫子さんへのお仕置きを考えておいてくださいね》
「わかりました。楓さんもくれぐれも気を付けて来てくださいね。」
《久しぶりの運転ですが、お客さまを乗せていますので、あまり無茶はしないですよ。それでは失礼します》

 

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